2023.06.02再就職管理職
「私のキャリア道 ~お客様対応から広報へ~」(神戸市女性リーダー育成研修 ロールモデル講演会より)
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2000年ネスレ日本株式会社 お客様相談室 コミュニケーター 派遣社員
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2001年ネスレ日本株式会社 入社リレーションシップマーケティング室
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2005年スイス本社の消費者対応部門のプロジェクトに参加
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2006年お客様相談室長
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2008年メディアリレーションズ室長
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2015年エクスターナルリレーションズ部長
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2017年執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長
「私のキャリア道 ~お客様対応から広報へ~」
- (神戸市女性リーダー育成研修 ロールモデル講演会より)
神戸市内の企業で経営幹部等を目指して働いている女性に向けて、ネスレ日本株式会社 執行役員の嘉納未來さんによるロールモデル講演会が開催されました。
「このような場で人に会うと刺激や元気をもらえたり、人って素敵だなって思えたりします。これからのキャリアを考え、活き活きといろいろな道を進んでいらっしゃるみなさんの期待に応えられるよう、何かヒントを持ち帰ってもらえるようなお話ができたらという心構えで参りました」という嘉納さんの挨拶から講演会が始まりました。
自己紹介の際にお話されたご自身の三大特徴のひとつである「声の大きさ」がキャリアをつくってきたそうです。
経験と学びを大切にして築いてきたキャリア
ネスレ日本株式会社は、スイスに本社を構えており、取り扱っているブランドは飲料、食料品、ペットフードなど2,000以上。186カ国で、1日に10億個の製品が販売されており、日本には約2,400人の従業員がいます(2023年2月7日講演時点)。
キャリアの原点
就職活動の際に抱いていた2つの想いが、キャリアの原点となっています。それは、ベルリンの壁崩壊の映像を見た時に抱いた「世の中に起こっていることをわかりやすく、いろんな人に伝えたい」という想いと、阪神大震災で被災し、不自由な生活を強いられていた時に感じた「食べることの楽しみを伝え、人を喜ばせたい」という2つの想いです。
これまでのキャリアの変遷
●損害保険会社 損害サービス部門 自動車事故担当として
キャリアのスタートは、損害保険会社でのお客様対応からでした。当時、新人にもかかわらず、自動車事故の最前線で、自動車事故受付、損害確認、示談交渉、保険金支払いまで担当するという重要な仕事を任せられました。そのとき、相手の話をじっくりと聴かないまま話を進めようとして、相手を怒らせてしまったことがあり、「聴き上手」になることの大切さを知りました。
大変な仕事でしたが、コミュニケーションの取り方、解決策の立案方法を学ぶという意味で、社会人としてとても良い経験をしました。
ただ、より日々の生活に関わる「消費者対応のスペシャリストを目指したい」という気持ちが強くなり、転職のきっかけになりました。
●お客様相談室 コミュニケーター、リレーションシップマーケティング室
食品企業の不祥事が起こった直後の2000年に、ネスレのお客様相談室で、派遣社員として食品飲料の受電対応を担当するコミュニケーターになりました。何と、配属初日にCEOが出迎えてくれて、すごい会社だと驚きました。
その後、「こういう仕事がやりたい」という自分の意思と会社の人員募集のタイミングが合い、ネスレへ正社員として入社することができました。
配属されたのは、リレーションシップマーケティング室で、ロイヤルユーザーの方を対象にしたお客様サービスを担当したのですが、その際に大切にしてきたのは、「まずはお客様のお話を聴く。それから、お客様と会話すること」と「様々な担 当者とのチームワークを大切にし、問題解決に取り組むこと」です。
お客様との会話を通じてファンをつくり、一人ひとりのファンに喜んでもらうために、 広告代理店、コールセンター、百貨店、通販会社、システム運営チームなどが一体となったワンチームで仕事を行うことがとても楽しい時代でした。
●ネスレスイス本社 VOCプロジェクトで
2005年、スイス本社の消費者対応部門におけるプロジェクトに参加する貴重な機会が与えられ、グローバルな視点で、ネスレの凄さを感じることができました。
海外で働くことに必要だと感じたことは、「自分の国のことを知り、自分の考えがあること」です。自分の国のことを知っていれば、他国とは異なる習慣や考え方などを語ることができ、自分の考えがあるからこそ、得意ではなかった英語と闘いながらも、自分の考えや想いを伝えようと、何とか頑張り続けることができました。
●ネスレ日本 お客様相談室長として
2006年、スイスから帰国後、お客様相談室長に任命されました。責任者として難事案、訪問要請への対応を求められる2年間は大変なことも多くありました。一人で抱え込まず、様々な部門と協力し対応する、人を頼る、人を巻き込むことができたことが良かったと感じています。また、当時より在宅勤務を導入しており、在宅勤務のコミュニケーターを訪問して直接話を聞き、コミュニケーションを大切にしながら、関係性をフラットにすることを心掛けました。
●ネスレ日本 メディアリレーションズ室長
お客様対応をずっとやろうと決めていた頃、「30代前半で自分のキャリアの道を決めてしまうな」と新天地へ送り出してくれる上司の言葉がきっかけとなり、2008年に広報の仕事に飛び込みました。消費者との1対1のコミュニケーションから、 テレビや新聞などのメディアを介した1対多数の対応に変化したことで、影響力と責任の重さを感じ、緊張の日々が続きました。
広報時代には、様々なトップクラス、シニアクラスの方の考え方に触れることも多く、他社の広報の方とのネットワークもできました。
この時代も食品企業不祥事が続いており、今でも記憶に鮮明に残っているのは、着任半年で、全国放送で「品質安全宣言」をしたことや、週刊タイヤモンド(雑誌)のネスレ特集号に関わったことなどです。
メディア露出機会を獲得するため奔走した経験は、今でも糧となっています。
●ネスレ日本 エクスターナルリレーションズ部長
2015年にエクスターナルリレーションズ部長となり、行政、NPO、NGO、有識者などのステークホルダーと地道に関係性を築いていく中で、相手との関係性が変化していくことに仕事の深みや面白さを感じるようになりました。
トップマネジメントによる、会社のパーパスや価値観に関する基調講演ストーリーを作成する機会があったのですが、今までは歯が立たなかったトップマネジメントに、自分のストーリーを受け入れてもらえたことが、とても印象に残っています。
●執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長に着任
2017年、「広報の道を極めよう」と「講演」「広報」「ワークショップ」について外部で学ぶ機会をつくるため、大学院に入学しました。とてもハードですが、学びの場での「先生や様々な背景をもつ同級生との出会い」から良い刺激を受けました。
学び直しを始めた同じタイミングで、執行役員へ着任することになりました。モチベーションと不安が半々の状態でしたが、人との出会い、つながり、社外での講演経験などが自分自身の成長、刺激となりました。
サステナビリティのコーディネーター、新型コロナ対策委員会など様々な役割に悩みながらも、精一杯取り組む日々が続いています。
消費者、社員、ビジネスパートナーなど様々なステークホルダーのみなさんに「いい会社ね」と言ってもらえる広報活動ができるよう、長期の戦略を立てて形にしていきたいと思っています。
みなさんに伝えたいこと(4つ)
●夢を持つ・得意で好きな分野をつくる
夢や得意分野に関わることができず、道のりが遠く見えたり、辛く大変なことがあるかもしれません。けれど、夢や得意分野での「自分のキャリア像」や「自分の信じた道」を持っていれば、楽しいことが見つかる局面がやってきます。
●夢を上長やリーダーに共有する
夢を語る時は「話が止まらない・楽しそう・輝いている」もしくは、「絶対に譲らない頑固なところ」が出てくるはずです。上長に夢を共有することで「このプロジェクトを任せようか」というチャンスが巡ってきたり、キャリアを開くきっかけにつながります。
●常に外の視点を持つ・人に会う
社外に目を向けたり、社外の人と話をしたりすることはとても良いことです。この講演会のように社外の人と出会える場所を大切にしてください。
●リーダーシップはBe Yourself!
気負わずに自然体で、自分の良さ・自分らしさを出したリーダーシップで。私も以前は「演じないといけない」と思っていましたが、「演じなくて良い」と知ってからは気持ちが楽になり、肩の力が抜けたと感じています。