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白鶴玉田氏の正面写真

2023.06.06技術系男性育休管理職

チームプレーの職場で取った育休、 変わったのは「甘えたことがなかった」自分の考え方

  • 2012年
    白鶴酒造株式会社 入社研究室に配属
  • 2020年
    本社三号工場(製造現場)へ異動主任へ
  • 2022年
    第1子誕生【産後パパ育休取得:4月25日~5月15日】
  • 【育児休業取得:7月18日~8月26日】
  • 2023年
    研究室へ異動

自分が“社内初”であれば、育休は取らなかった

 ―入社されてから、また育児休業を取得された当時のお仕事について教えてください

入社してすぐに研究室に配属になり、8年間、清酒醸造に関する技術開発などの研究をしていました。その後本店三号工場に異動になり、製造現場に配属されて3年目で育児休業を取得しました。本店三号工場では清酒醸造を3工程に分けており、1工程あたり10人程度の計30人で分担する、まさに「チームプレー」の現場でした。

 ―育児休業を取得しようと考えたきっかけは?

就職した当初は男性が育児休業を取るイメージすらなかったです。ここ5年くらいで育児休業を取る男性社員が職場内で増えてきて、みんな「取ってよかった」って言うんです。そういう周りの流れもあって、「こどもが生まれて最初の貴重な成長を自分も間近で見たい」と思うようになりました。
また、里帰り出産ができない事情もあって、妻からもできれば育児休業を取ってほしいと言われており、生活リズムや環境が整うまで育児休業を取ろうと考えました。でも、もし周りが取っていなくて自分だけであれば、私の性格上育児休業は取らなかったと思います(笑)。

―産後パパ育休取得後に、育児休業を取得されたとのことですが、なぜこのような形にされたのですか?

こどもが生まれた4月末は、清酒の製造現場は繁忙期なので長期は難しく、産後パパ育休を3週間取得しました。その後酒造りの仕込みが終わって、次の仕込みが始まるまでのオーバーホール期間に合わせて、7月中旬から8月中旬までの1か月間育児休業を取得しました。

―2回に分けて取得されてどうでしたか?

仕事の都合で分けて取る形になりましたが、結果的にはよかったです。
1回目は生まれた直後で本当に大変だったので、妻と一緒に夢中でこどもの世話をしました。
2回目はこどもが3か月になっていたので、少し落ち着いて育児をしながら今後の生活環境を整えることができました。具体的には、子育てしやすい新しい住まいへの引っ越し準備や新居からの動線を考えた保育園選びなど、これからの生活を見据えて動くことができました。仕事をしながらだと、なかなかそこまでの余裕はなかったと思います。

「すべて自分でする仕事」が、常にいいとは限らない

―既に男性の育児休業取得者も多く、理解のある職場だと感じますが、一定期間休むことについて、ご自身の中で何か感じることはありましたか。

育児休業を取得したいと相談した時、上司や同僚みんなが応援してくれました。でも当然1人減るので現場は大変です。1回目の時は4月で慣れていない人も多い中、私が本来する作業のところもチームの中で「お互いさまだから」という雰囲気で受け止めて、やりくりしてくれているのがわかりましたし、他の工場からの応援があったことも知っています。2回目の時は私が本来すべきプレゼンテーションを上司にやってもらいました。上司は個人的なやりとりの中で「プレゼン、全然問題なかったよ」と教えてくれるなど、育児休業中にも疎外感を抱かないよう配慮してくれていました。もちろん資料など作れるものは全て準備をして引き継ぎしていましたが、職場に対して「悪いなぁ」と思うことは多々ありました。

―そのような気持ちを、自身の中でどう整理されたのでしょうか。

会社に入って12年になりますが、今まであんまり職場に甘えたことがなかったというか、1人で抱え込みすぎて上司に心配されたこともありました。研究をしていた時も結構無理をしてガツガツと1人で没頭するタイプでした。でもこどもが生まれて育児休業を取った時に「時には甘えられるところは、甘えたらいいかな」と少しずつ思うようになりました。今まではもうどれだけでも無理できる、という感じだったんですけど、今はこどもが風邪をひいたり、その後自分も風邪をうつされたりすると、どうしても仕事を休まないといけないことも出てくる。時には誰かに頼ってもいいんだ、というふうに考え方が少しずつ変わってきたと感じます。

―考え方の変化には、職場の風土も影響していましたか。

そうですね。製造現場には3年いましたが、チームプレーの現場なので助けあいの空気がすごくありました。どこの工場も育児休業に限らずお子さんやご家族の発熱などで休む人も結構いるんですけど、それで「なんでやねん!」とはみんな思わない。対応にバタバタすることもないですし、「誰かが抜けたら、誰かが埋めたらいい」という考え方と協力体制が浸透していると思います。
私も自分が甘えられたことで、逆に誰かが休んだ時に「みんなでうまいことやったらええやん」と素直に思えるようにもなりました。実際に育児休業から復帰後には他の工場の応援にも行きました。

向き合っていたのは、「こどもと」だけではなかった

―育児休業取得時のご家庭の役割で、得意不得意などはありましたか?

実は、料理は苦手です。でも必要な時は肉と野菜を炒めたり、魚をムニエルにしたり、簡単なものは作りました。管理栄養士で料理上手な妻は「まぁええんちゃう」という感じで食べてくれました(笑)。料理は正直妻に頼っていた部分もありましたが、買い物、洗濯や掃除などの家事は自分がやっていました。洗濯については、育児休業中にドラム式洗濯機を買って、乾燥までできるようにしました。妻も翌春には、仕事復帰する予定だったので、家事など今後の生活について、ふたりで考えていく時間にもなりました。

―お子さんとの関わりはいかがでしたか?

とにかく目の前のことを夢中になってやっていたので、よく覚えていない部分もあります(笑)。もちろんこどものオムツ替え、寝かしつけ、入浴など妻と協力しながらやっていました。うちの子はわりとよく寝てくれたので楽な方だと思います。それでも夜中に泣いて起こされて、必ず1回はオムツを替えていました。頻繁に泣いて、また寝られへんなぁということもありました。
朝から晩まで1日があっという間でしたが、こどもがしっかりと育っていく様子を間近に見ることができて本当に良かったと思います。そのおかげかはわかりませんが、すごく懐いてくれています。お父さんが抱っこしただけで泣くという話も聞きますが、妻が外出中に自分1人でこどもをみていてもほとんど泣かないのでありがたいです。

―家事やお子さんのお世話をしながら、仕事のことを考えることはありましたか?

もちろんありましたし、個人的に仕事関係の連絡をとることもありました。でもきちんと回るように上司がいろいろと気にかけてくれていましたし、現場もみなさん優秀な方ばかりです。誰かが抜けてもみんなでカバーしあえる、チームワークの良い職場でありがたいと感じるようになりました。
2回目の育児休業の時も大変でしたが、こどもが寝ている間などで、今までを冷静に振り返るとか、これからの仕事やキャリアについて考えていました。これまでまとまった休みをとることなく働いてきていろんなことを考える時間も余裕もなかったので、今後の人生をどうしていこう、みたいなことも深く考えることができました。

「こどもに合わせていく」生活で、いろんな選択があっていい

―これから育児休業取得を考えている男性、取得を迷っている男性にメッセージをお願いします

いろいろと考え方が変わるという点で、私は育児休業を取ってよかったと思っています。「子育てが大変」というのは、こどもには理屈が通じないので、なかなかこちらの思うとおりにはいかないところだと思います。可愛いんですけど(笑)。もちろん体調を崩したりすることもあります。そのために仕事で何でもかんでも自分1人で抱え込まなくてはならないという考え方はあまりしないようになりました。もちろん多少無理をしてでも頑張らないといけないときもありますが、時には誰かを頼ってみるなど、いい意味で割り切ることができるようになりました。もちろん、不測の事態を見越して先々の段取りをすることも欠かせません。また、逆に他のメンバーが困っているときにはできることはフォローすることも大切だとあらためて感じています。
正直、私も仕事を離れて育児休業を取ることに少し抵抗はありましたが、今の会社のいい空気に後押しされて取得できました。男性の育児休業取得に理解がある職場はまだ少ないと思います。育児休業を取らずに仕事をやり続けるという選択ももちろんあると思いますが、子育てをしていく上でそれぞれの状況に応じていろんな選択肢や選びやすい環境が広がっていけばいいと思います。

 

 

白鶴酒造株式会社 本店三号工場 古谷能紀工場長コメント

職場としての経験値も大きな力に

育児休業取得時の人員確保については、管理職も含め職場での相互サポートや、作業工程の見直し、他の工場からの応援などで対応しています。職場には子育ての大変さを経験している男性社員も多く、1人の穴をみんなで協力して埋めようという気持ちがあります。5年以上前から男性社員の育児休業取得者が増えており、職場内の経験値も上がっているので、工場長としても申し出を受けたらすぐに頭の中で段取りがつくようになりました。
人員減をカバーする体制の中で、無駄な作業の見直しや、個々のスキルが上がるなどのメリットも感じています。また育児休業を取って家庭のことをしっかりやることで、その後会社に戻っても明るい顔で働いてくれることが何よりもうれしいです。

所属団体名
白鶴酒造株式会社
所在地
〒658-0041 兵庫県神戸市東灘区住吉南町4丁目5-5
事業内容
製造業
規 模
資本金:4億9,500万円、社員数:391名(2023年4月現在)
ホームページ
https://www.hakutsuru.co.jp/

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