2023.02.10技術系管理職
「やってみたい」という気持ちと「たくさんのロールモデル」が私の原動力
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2006年大学卒業後、入社技術開発を担当
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2007年ご結婚
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2011年第一子 ご出産
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2015年係長へ昇給
ダイバーシティ推進室を兼務 -
2017年第二子 ご出産
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2020年課長へ昇給
「好き」「やってみたい」という気持ちに導かれて
―入社されてから、現在まで、どのようなお仕事をされてこられたのですか?
デンソーテンは、カーナビ、ドライブレコーダー、自動車電子機器部品などを作る会社です。
私は技術系総合職として入社し、製品の安全性・品質・信頼性を向上させるための技術開発を担当しました。
現在は、車載機器製品の設計に必要な技術システムの企画・提供を担当しており、製品そのものを作るというよりも、製品を作るのに必要な道具の技術開発(要素技術開発)を担当しています。具体的にいうと、電子機器から発生する意図しない熱エネルギーを制御する技術開発です。
―身近なものに例えるとどのようなことでしょうか?
スマートフォンで例えると… スマートフォンを使っている時に熱くなってしまうことってありますよね。
「熱くなってもここまでなら大丈夫」ということをコントロールするような、ユーザーの方には直接見えにくい部分で製品を支えています。
―技術職としてやりがいを感じるのはどんなところですか?
入社3年目の頃、同期たちが「自分が携わった製品」を世に送り出す中、もっと基礎的な技術開発をしている私には、明確な成果や実感がなく焦っていました。そんな時に、ある部品の選び方を社内技術者へ提唱する機会をもらいました。今まで皆がなんとなく経験で選んでいたものを、理論に基づいて実証し、説明したことで、より適切に素早く部品が選べるようになり、社内へ広まっていったことが成功体験として印象に残っています。
製品の形を作る・機能を作るというのは別の技術者が担当するんですが、意図せずに出てしまうエネルギーの制御をするという分野は、どちらの技術者にも考えてもらわないといけないことなので、それをどう伝えれば、効果的に受け取ってもらえるのかを考えることも、やりがいにつながっています。
―現在のお仕事につながるような理系科目は、子どもの頃からお好きでしたか?
折り紙や工作が好きでした。理系科目が好きだったので、大学では理学部 物理科学科で放射線の動き方を研究していて、「モノを作る製造業の会社で、技術者として働きたい」という気持ちがありました。
就職する頃は、理系の女性を積極的に採用しようという時代の流れはあったものの、
まだまだ子育てしながら働く女性技術者のイメージがしにくい時代でした。
デンソーテンに入社を決めたのは、各種制度が充実しているだけではなく
全社をあげて定時退社日を推進しているとOBに教えてもらったことが大きいです。
性別関係なく本気で働き方の見直しに取り組んでいるんだなと、とても印象的で惹かれました。
今でも思い出すあの人の言葉。「いいな」「慕いたいな」と思える方が、私にはたくさんいる
―子どもを持ちながら働くことについてはどのように意識されていったのですか?
入社2年目で結婚し、「今すぐというわけではないけれど、子どもは欲しい。楽しいから仕事も続けたい。早めに子どもを産んで職場に戻って来た方がいいのか、仕事の実力を付けてから子どもを産んだ方がいいのか」と悩み、上司にも相談しました。
すると上司は、「今、本当に仕事が楽しいと思っているなら、自分が人に教えられるくらいまでやって、区切りを付けてみたらどうかな?」とおっしゃってくださいました。
夫とも、お互いの気持ちや将来について話をしていましたし、友人や先輩に相談して、「私の産みたい時期は、仕事に納得できてからかな」と思いました。
―その後、入社6年目、12年目の時にご出産されていますが、産休・育休中はどんなお気持ちで過ごされていましたか?
それまで仕事中心の生活だったので、第一子の産休直前は「大丈夫かなぁ。こんなに仕事が楽しいのに、ここで打ち切って未知の生活が始まるんや…」と不安でした。
出産後は余裕がなくて、バタバタしていたらあっという間に1年経っていたという感じでしたね。
―復帰する直前はどうでしたか?
「こんなにちっちゃい1歳の子を預けて、私は働くんや…」と後ろ髪を引かれる思いがしたり、「本当に仕事ができるのかな?休んでいる間に他の人が育っているから、いなくてもいいと思われるかな?」と焦りを感じたりしていましたが、復帰直前には、「お母さんは好きで仕事をしているよ!と娘(第一子)に言えるように働こう」、「私には協力してくれる夫、信頼できる上司がいるんだ」という気持ちになり、フルタイムで復帰しました。
ちょうどその頃、女性技術者を育てていこうという会社の取組があり、「この流れに素直に乗ろう」と管理職を目指すことを意識し始めました。
―ご出産を経て管理職を目指してみようと思われた時、目標とされた方はいらっしゃいましたか?
はい。「ロールモデルは1人ではなくて、いろいろな方の良いところを参考にしましょう」と研修で学んでいたので、たくさんの方の良いところを参考にさせていただいていました。
その中でも、「私が管理職だからと言って、私のことを勝手に尊敬の目で見ないでほしい」という、自分自身が女性管理職であることを特別視していない先輩女性の言葉、「男性であれ女性であれ、働きたい人・働ける人にはのびのび働いてほしい」という男性の大先輩の言葉が印象に残っています。
今回、この取材のお話をいただいた時、「私にはキラキラしたことは話せないなぁ…」と思っていたのですが、こうやってお話していて、「そうだ!私には、“いいなぁ” “慕おう”と思える人がたくさんいるなぁ」と感じています。
―ロールモデルチームがあるというわけですね。
では、仕事と家庭を両立する中で大変だなと感じたこと、工夫したことはありましたか?
第一子出産後は、「こんな風にやりたいのにできないな…」と焦りを感じたり、「昇級試験を受けてもいいのかな?仕事が中途半端になっていないかな…」と気持ちが揺れたりしていました。
仕事と家庭を両立したいという気持ちがあるのに自分の理想通りにはいかず、体力的にも辛かったんです。「自分の頑張りだけでは成り立たないな…」と感じていたため、仕事でも家庭でも、チームワークを大切にすることを心がけるようにしました。
仕事では、向こう1週間の予定はメッセージで、今日明日の予定は朝礼で伝える…というようにこまめに予定を共有し、「なにかあれば声をかけてね」と自分から発信することを意識しています。
家庭では、「私にできないことは、一緒にやってほしい」と伝えて、3年がかりで夫と協力体制を作っていきました。
家事は最終的な目的が達成できればいいという考え方です。例えば、「食器は翌朝までに洗う」ということだけ合意し、食器を洗う順番や洗い方には口出ししません。
“家事を分担する”という考え方ではなく、「チームで家庭をまわそうね」と夫が言ってくれるので、今は仕事も家庭もうまくまわっています。
2人の子ども達もチームの一員なので、「仕事も家庭もみんなで分担、カバーし合ってやっていけたらいい」という感じです。
諦めないで、まずはやってみてほしい
―現在、管理職3年目ということですが、どのようなことを感じていらっしゃいますか?
「自分自身がこうなりたい」と考えることで解決する自分自身の仕事とは違って、今やらないといけない仕事をメンバーにやってもらうために、職場や会社として将来どうしていきたいかということを説明し、共有して、メンバーに動いてもらうことが難しいです。
「コミュニケーションにはセンスが必要なのかなぁ。難しいなぁ。しんどいなぁ」と感じることもあります。
けれど、「自分には経験のない未知の領域でも、チャンスがあるならやってみよう」という気持ちで仕事をしてきたように、「しんどいけれど、やってみないことにはわからない」というところは技術と一緒で面白いです。
―「しんどいな」と感じる時、心の支えになっているものはありますか?
娘の顔を見て、「この子に恥ずかしくない働き方ができているかな?復帰する時、どんな気持ちやったかな?」と当時のことを思い出すようにしています。すると、「もうちょっと頑張ろう」と仕事へ向かうエネルギーをもらえます。
これからも家族みんなで家庭を運営しながら、楽しく生きられたらいいなと思っています。
―理系の進路や技術職を目指してみたい女性、また、管理職を目指してみたい女性へメッセージをお願いします。
男性であれば技術者も管理職もいろいろなタイプがいて当然と思われていますが、女性というだけで「とても良くできる人」「怖い人」「厳しい人」、「パワフルな人」など”特別な人”という先入観を持たれがちです。
ですが、私のように理系が好きなだけで就職しても、働いているうちに「好きなことがみつかった!」と感じられれば、技術者として続けていくことができるんです。
そして、管理職はあくまでも、仕事のポジションのひとつ。大変なこともあるけれど、ある程度の裁量を持ちながら、面白さも感じています。だから、最初から遠ざけたり、「私にはこれは無理だ」と選択肢から外したりするようなことはしないで、「声をかけてもらった時には、まず気軽に仕事を受けてみたら良いよ」と伝えたいです。