2024.12.18フリーランス
大切なことを大切にできる働き方とは?~フリーランスとして歩みはじめて
野末 真紀(のずえ まき)さん プロフィール
新卒で旅行会社に入社、営業や企画・添乗業務などを担当。結婚を機に転職し、大学事務員として、教授のスケジュール管理やイベント運営などを行う。第一子妊娠・出産を機に退職。株式会社ママクリエイターラボが開催する「ママクリエイター講座」を受講、動画編集などを学んだことをきっかけに、現在はフリーランスとして、動画編集講師、他企業のライターやPR業務も行う。4歳と2歳の子育て中。
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2015年4月旅行会社に総合職として入社
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2018年9月結婚と同時に大学事務員に転職
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2020年9月妊娠・出産を機に退職
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2022年10月「ママクリエイター講座」受講開始
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2023年8月フリーランスとして活動開始
飯田 陽香(いいだ はるか)さん プロフィール
新卒で看護師として病院に就職し、小児科病棟で勤務。その後、障がいのある方の福祉施設で働き、結婚を機にベーカリーカフェに転職。販売、カフェでの接客・調理、商品紹介のPOPやメニュー作りなどを担当。現在は1歳になる第一子の育児休業中。「神戸女性ウェブクリエイタープログラム」を受講し、動画編集やチラシ作成、Instagramの投稿作成などを行うフリーランスとしても活動。
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2016年4月小児科専門病院に就職
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2019年4月重症心身障害児・者の福祉施設に転職
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2022年4月結婚を機にベーカリーカフェに転職
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2023年3月第一子出産、育児休業を取得
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2023年11月「神戸女性ウェブクリエイタープログラム」受講開始(2024年1月修了)
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2024年2月フリーランスとして活動開始
働き方をイメージするって難しい
———お二人とも動画編集などを行う「WEBクリエイター」を養成する講座受講をきっかけにフリーランスの道へ。野末さんが動画編集の講師、飯田さんが生徒というご関係の時期もあったそうですね。フリーランスとして活動する以前にも、いろんなお仕事をされてきたということですが。
野末さん:私はもともと「好きなことを仕事にしたい」という想いがあって、まず旅行会社で3年働きました。結婚と同時に引っ越して通勤に時間がかかるようになり、添乗業務など出張もかなり多かったので、別の仕事も経験してみようと大学事務員に転職しました。そこでも多岐にわたる仕事を2年間経験して、妊娠・出産を機に退職しました。
飯田さん:私はまず小児がんと闘う子どもたちの病棟で看護師として3年働きました。その後、障がいのある方たちの福祉施設に転職、そこで夫と知り合って結婚しました。夫が当時の上司だったこともあって転職を考えました。もともと好きだったパン・お菓子の仕事ができればとベーカリーカフェで働くことに。今は第一子を出産して育休中です。
———フリーランスをめざしたきっかけは?
野末さん:夫の仕事の都合上、2~3年ごとに転勤があります。キャリアが転勤のたびにリセットされるのではなく「場所を問わず働ける環境」を目指したいと思いました。出勤が必要な仕事だと、子どもの体調不良などで周囲に気を遣うので、在宅で仕事をしたいという想いもありました。
飯田さん:私は子どもが生まれて、できるだけ家族の時間を大切にしたいと思いました。一方で、育児休業中とはいえ、社会から取り残されたような気持ちになって。同い年の子どもがいるママが仕事復帰してバリバリと働く姿を見ると、将来のことや、今、子育てだけで大丈夫なのかなど、いろいろと不安になりました。
野末さん:すごくわかります。私の地元の友だちは、定住前提でみんな家を建てて、仕事をしながらきちんと将来設計している感じ。転々としながら好きなこと、子育てしているだけでいいのかなと思うことがありました。
———元々、どのような働き方をイメージしていましたか?
飯田さん:看護師の資格は「辞めてもまた戻れる」という思いで取りました。でも最初の職場が激務で、この生活をずっと続けるのは無理だと、当時から自分に合う働き方を考えるように。結婚、出産を経て、また将来的な働き方を見直す中で、子どもとの時間を大切にしながらも、働いて社会と関わることができないかを考えるようになりました。
野末さん:働き方のイメージって難しいですよね。転勤族の人と結婚した時に、当時の仕事は続けられないと想像して、そこからいろんな場所へ移動することや育児をまず楽しもうと。3年前に転居してきましたが、また転勤があるかもしれないという状況です。その中で将来的にこうしたいというよりは、臨機応変に、流れのままに子育て生活や働き方を考えている感じです。
自由、ではあるけれど
———フリーランスとしての活動で大変だったことは?
飯田さん:まず「フリーランスとは?」がわからず、情報収集からのスタートでした。インターネットで調べても、情報が多すぎて知りたいことになかなか行きつかないんです。報酬をいただいた時には、手続きとして何をどこまですればよいのかもわからない。これまで税金や保険のことも会社任せだったので困りました。
野末さん:私が受講した「ママクリエイター講座」を運営している株式会社ママクリエイターラボでは、講座とは別にフリーランス向けの開業届の出し方、インボイス制度の説明などの特別講座があって、私はそこで勉強しました。講座でできた仲間同士で確定申告や請求書発行のやり方も教え合うこともありました。
飯田さん:なるほど、参考になります。もう1つ、自分から仕事を取りにいくのも大変じゃないですか?
野末さん:確かに。まずは友だちや知り合いになった人に「こんな仕事をしています」とさりげなく伝えるだけで、思いがけず仕事の相談や依頼を受けることはありますね。まだ軌道に乗っているとは言えませんが、声かけがあれば「とりあえずやります」と前向きな感じで受けて、やらざるを得ない状況に持って行くようにはしています。それが動画編集だけでなくその講師など、他の仕事につながることもあるので、迷っている暇があればやっていくのが大事だと思います。また、お客様の反応がよければ継続の仕事につながることもあります。
飯田さん:そうですね。チャンスをもらえること自体がありがたいので、しっかりとつかんでいきたいです。
———仕事獲得など、そもそも「自分発」の動きはしんどくないですか?
飯田さん:今、まさにそのやる気が出ていない状態で(笑)。アドバイスがあれば聞きたいです。
野末さん:最初の頃は仕事もなくて、「すべては自分次第」というしんどさをすごく感じていました。私は洋服がすごく好きなので、仕事をして好きな服を自由に買うぞ!という気持ちでモチベーションを保っています。「これが欲しい」と思ったら、「じゃあ今、この仕事をがんばらないと」と目の前のこともがんばれる気がします。
飯田さん:あえて仕事目標ではなく「自分ための目標」を持つのは、すごくいいですね。
———仕事、育児など「時間のかじ取り」はどのように?
野末さん:今、それが課題ですね。長男は幼稚園に通っているので、夏休み期間は朝早く起きたり、夜中にかなり仕事しないといけなかったり…寝不足でしんどかったです。忙しい時には日中1時間ビデオを見せて、自分の仕事時間を作ることも。頼れるものは全部頼るという感じです。普段は例えば次男の保育園の迎えのあと、この時間までは仕事をしないなど「子どもと過ごす時間」を決めるように心がけています。
飯田さん:時間も、気持ちのメリハリも大切ですよね。今は四六時中子どもと一緒なので、日中の仕事時間はなかなか取れません。でも残っている仕事があると、子どもと遊びながらも「あの案件〇〇までにやらなきゃ」と考えるなど、子どもとの関わりも中途半端になっていた時期がありました。子どもはそれを感じ取って無理やり膝の上に乗ってきたりするので、これではダメだと。そこで仕事のことは一旦忘れて「子どもと遊ぶことに集中する」と決めたら、気持ちが少し楽になりました。
きちんと向き合った経験はつながっていく
———フリーランスとして活動する中で印象的な出来事は?
野末さん:好きなファッションブランドのオンラインサロンに入っているのですが、そこで「動画編集の仕事をしています」と伝えたところ、Instagramのリール作成など仕事の声かけをいただきました。フリーランスとして、自分が憧れていた分野に関われるようになったのは印象的でした。
飯田さん:私は初めて受けた仕事が印象に残っています。少し長い動画だったのですが、実力が伴っておらず、めちゃくちゃ時間がかかってしまって。本当にできるのか不安でいっぱいの中、実は野末さんにもサポートいただいて、何とか最後までやり遂げた時には「スキルが身についた」と自信につながりました。
野末さん:最初は本当にしんどいですよね。私も時給換算すると辞めたくなるくらい時間がかかったことを覚えています。「本当にこの仕事をやり続けるべきなのか」と考えたり、自分が消耗してしまいそうで不安になったり。新しいことに挑戦する人はみんなそう思うし、仕事だから「がんばらないといけない瞬間」があることも、今ではわかるようになりました。だから講師をする時にはみなさんに「慣れだよ!大丈夫」と声をかけるようにしています。
———今、役に立っている過去の仕事経験はありますか?
野末さん:最初に入った旅行会社では、営業、プラン作成、添乗、請求事務まで何でもやっていました。今、フリーランスでいろんなことに挑戦しようと思えるのも、前職のいろんな経験が後押ししてくれている気がします。講師の仕事も、当初は人前で話すことに抵抗があったけれど、やってみると意外に楽しくて、得意分野の1つになってきました。
飯田さん:私はこれまで看護師やカフェなど人と関わる仕事の中で、相手の立場になって考えることを意識してきました。今の仕事は、対面ではなくオンライン上のやり取りですが、相手が今どういう立場で、何を考えて依頼しているのかなどを考える習慣がとても役に立っています。人からは、命を預かる看護師で備わった責任感や、夜に仕事するのが苦でないところも強みでは?と言われます。
私の機嫌をとれるのは、私しかいないから
———日々、どのように息抜きやリフレッシュをしていますか?
飯田さん:子どもが昼寝に入ってからの「コーヒーと甘いもの」はいちばんホッとしますね。
野末さん:わかります(笑)。よほど疲れていたら、子どもが幼稚園や保育園に行っている間にカフェに行って、リフレッシュしながら仕事することもあります。場所を変えるだけでも気持ちの切り替えに。自分のタイミングで仕事ができるので、丸一日休んで、買い物やドラマ、映画を思い切り観るといったご褒美の日も。フリーランスとしての苦しさもある分、特権も活かしたいですね。
飯田さん:私は、気持ちにゆとりを持つために「家事の時間」を朝の1時間半と決めて取るようにしています。子どもがテレビを観ている間に、掃除や晩ごはんの支度など全て終わらせます。あとは子どもと遊んだり、ゆっくり休んだり、そこでリフレッシュできるので、夜、仕事にも専念できます。
野末さん:家事時間のとり方も大切ですよね。最近、子どもと一緒にスーパーに行くと、思うように動きが取れないのが悩みで。今は仕事時間を削ってでも、1人の時にサッと買い物に行っておく方が、イライラが減って穏やかな気持ちで過ごせるなぁと思っています。
———フリーランスとして仕事する上で大切にしていることは?
野末さん:やれる可能性があることは基本的に断らないことです。ただ、家族との時間のバランスには気をつけています。例えば一定期間、睡眠時間を削ってできそうな案件であれば受けることはあっても、恒常的な業務でずっと睡眠不足、家が回らなくなるくらいであればお断りします。自分の仕事量と、プライベートをどのぐらい確保すべきかの見極めも大事だと思います。
飯田さん:私も駆け出しなので、今、経験が一番欲しい。でも同じように精神的に追い詰められないか、家のことに支障が出ないかというところが判断基準になりますね。あと夫の協力も不可欠です。「今、大変な仕事をしているので、3日間くらい夜もあまり眠れなくなるけど、その分がんばってもらえますか?」みたいな交渉をします(笑)。
野末さん:すごくわかります。しっかり仕事時間を取りたい時に、夫にただ「仕事をしたい」と言うのではなく、どういう仕事で、どのくらい時間がかかるといったことを話せる範囲で伝えるようにしています。「家で仕事しているからわかるだろう」と思わず、コミュニケーションをとることは大事だと思います。
飯田さん:そうですね。伝えることで、夫もより家事育児に協力的になった気がします。
道を決めないからこそ、広がりもある
———フリーランスに向いているのはどんな人でしょうか?やはり「夜でも仕事をするがんばり」は必要なのでしょうか。
野末さん:確かに夜でも仕事を楽しめる人、ということはあるかもしれません。特に自分の実力が伴わないうちは夜中でもやらないといけないこともあるし、行動していかないと仕事は減っていく。すべて自分次第なのが、フリーランスのメリットであり、デメリットでもありますね。
飯田さん:そうですね。でも夜に子どもが寝てから仕事に行くことは現実的でないけれど、フリーランスとして動画編集の仕事があるから社会とつながりができて、稼ぐことができる。私はそういう見方もできると思っています。
野末さん:周りを見ても企業勤めの人が多くて、フリーランスはまだ少数派です。でも自分の好きなことを仕事にしたい人、特に子どもが小さいうちは自分で仕事をコントロールしたい人にも向いていると思います。
———フリーランスや起業・開業をめざす女性や同年代女性に伝えたいことは?
野末さん:フリーランスになって1年。まだ試行錯誤の日々ですが、行動すれば道が開かれるのがフリーランスのおもしろいところです。でも自分を追い込まないためにも「ダメだったら引き返そう」とか「他の選択肢もある」というふうに考えておくといいと思います。
飯田さん:いきなりフリーランスだけで生計を立てようとせず、他でパートなどしながら、プラスアルファで自分の興味のあること、好きな仕事でも報酬も得るという方法もある。状況に応じていろんな働き方を選べるのがいいと思っています。
野末さん:例えば子どもが大きくなったらどこかに勤めたいという場合でも、子どもが小さいうちにフリーランスで活動して「こういうことをやっていました」と言えるのは強みですよね。「ずっとフリーランスで」と意気込んでやるというよりは、好きでずっとやっていけるならそれもありだし、次のステップへの土台にすることもできると考えています。
飯田さん:今は女性が働くことがあたり前になって、しかもいろんな働き方がある。私自身は「今、何を大切にしたいか」ということをいろんなタイミングで考えながら、働き方や生活を組み立てている気がします。きっとみなさんの中にもやりたいことやこんな生活がしたいというイメージがあると思うので、そこを大切に一歩踏み出してほしいです。
野末さん:その時にできることをしっかりと積み重ねて、子どもが独立した時には、自分にとってやりがいのある仕事を思い切りする。そんな感じでずっといきいきと働いていたいですね。
(取材・撮影場所:神⼾市男⼥共同参画センター あすてっぷコワーキング)